という事で第三回ドンブラ鑑賞会を実施しました。本当は総集編の26話まで見たかったんだけど、時間の都合上25話までとなってしまいました。

この時期の話は今でも見返す話とそうでない話に差があるから、懐かしさと安定感を兼ね備えながら見る事が出来ました。


※この記事を書いたのは12月です


・16話

見返すと結構面白かった。

ジロウの変人っぷりや孕んだ狂気とかをテンポ良く見せてくれるから、割と楽しい。ジロウのキャラはフワフワしててあんまり掴めないけど、核となる部分(ヒーローへの憧れ・承認欲求の強さ)は抑えてるから良し。基本サイコで意味分からんけど。

友達は彼の意味不明さを見て「コイツ二重人格の獣人ちゃうかw」って言っててクソ焦った。まあ獣人の性質を考えて理性的に推測したってより、人格の破綻っぷりを見てその様に発言したんだけどね。確かにこの意味不明さは人外と考える方が理にかなってるのかも。

その子は555を見てる時もかなり序盤の方で巧=オルフェノク説を予言してたし、中々鋭い観察眼を持っていらっしゃる。ネタバレしない様に会話するのに体力使っちゃうぜ!


お供に攻撃出来なかったり、素直に感謝し謝罪したりするタロウも良かった。お供との関係性の変化が見れて有意義な場面だった。

この回までは前回までのドラマ成分の強い作風をギリ残してるかなって感じ。


・17話

翼の過去が判明する話だけど、それ以上の情報量はあまりなかった。大して引っ張るほどの内容はないかなって感じ。まあ、コスプレははじけすぎて爆笑したけどね……

翼と田辺とその彼女が織りなすドロドロの三角関係やつよしとソノニに介入による状況の変化等々、交錯しまくる人間関係は流石と言った所。彼女がヒトツ鬼になるのも予想外で痛快。

ただ、人間関係がごちゃごちゃしてる割にはオチの付け方は相当適当で、田辺と彼女が謎に仲直りするオチはかなり適当というかやっつけというか。最後の方は駆け足だったかな。


・18話

タロウから一本取る話。これは普通に傑作。

皆してタロウに挑むっていうシチュエーションがまず面白いし、最初からシチュエーションコメディに振り切ってて痛快。演出もギャグ要素強めだし、見ててワクワク出来た。テンポの良さと明るさとタロウのイキイキ加減は見てて幸せやね。


その上でタロウの孤独や寂しさをキッチリ描写してるし、シリアスとギャグのバランスがお見事。また、「タロウを尊敬してるのはジロウもお供も同じ」として、お供とジロウの関係性に若干の歩み寄りがあったのも上手い。まあ、それが生きる事はないんだけどね。

オチも完璧で、普通によく出来た話ですわ。傑作。


・19話

もしもしユーレイ。こういう単発回に振り切った話は意外と珍しい。

現代っ子のはるかが電話の良さを実感するっていうオチも綺麗だし、こういう「一つの結論に向かって話が展開し、オチが着く」って話は今作だとかなり珍しい。人情派路線としてもやっていけるポテンシャルはあるよね、ドンブラは。やらないだけで。


全体的に障害もなくトントン拍子に話が進んで行ってる感じはあるし、美奈子の最期も若干の物足りなさはある。それでも「ヒトツ鬼の心を救う」っていう普段のドンブラだと完全に捨て去られている要素がしっかりと昇華されているのは良い試みやね。


・20話

ここからヒーロー二部作。井上のヒーロー観が如実に出たエピソードやね。

まず20話では「影ながら人々を守るのがヒーローの務め」という古き良き時代の価値観をバッチリ提示してる。井上自身も自身のヒーロー観を古いモノとして捉えながらも、それでもなお真摯な姿勢であるべき姿を描いてるのは普通に熱い。価値観が古いとかそういう感想も出てこないくらいの感動がある。

しかもお供想いなタロウの素敵さや、そんなタロウを前に挫折するジロウの闇を見せたりもしてるし、各展開に無駄がない。ドラマ要素はそこまで濃くないけど、展開のさせ方は結構上手い。マスターの茶目っ気も見事だし、全体的に器用に纏まった話だと思う。


・21話

「ヒーローには誰でも変身出来るけど、力を持った者の精神性が大事」という井上らしい結論を見せた話。一番大事なのは変身者の善性や心意気なのである。

ただ「何故報酬もないのに戦えるのか?」という具体的で分かりやすい問題提起に対し、ちょっとぼやかした感じでオチを着けたのは不親切。結局何が言いたいのか、明確な答えがないんだもん(答えがないのが答え、的なノリではある)。

白井のオチも結構やっつけで、適当に改心しちゃってる感がある。テーマというか題材は凄く惹かれるんだけど、その辺のオチの弱さが結構気になるね。友達はあんまりピンと来てなかったし。
良くも悪くも井上を追ってないと脳内補完が難しい様な話だったかなと。難易度高いと思います。


・22話

漫画がどうとか椎名ナオキがどうとか、終わった事を今更掘り返すのはあまり好きではない。
マンガ制作と戦闘と妄想を行ったり来たりする展開は場面がコロコロ変わって楽しいけど、ここで追加されたはるかのドラマ軸には疑問が残る。

漫画家としての道はもうとっくに諦めているので、ここで蒸し返されても蛇足なんよなあ。ここで追加されたドラマ軸が活かされる事はほぼないし、扱いに困ってる感しかない。

脳人に人間を学ばせるって目標も、もはや形骸化してるしね。


・23話

普通に面白くない。獣人間の縄張り意識というか対立構造を見せただけで、それ以外の中身はゼロ。

13~15話に続いてこの回だったから、今作の渡辺監督あんまり好きじゃないかなあと思い始めてる。5~6話はビビるほど傑作なんだけど。


・24話

11話以降のドンブラで一番好き。
息子の振りをするタロウわちゃわちゃしながらサポートするという「コメディ」と、母親という存在の大きさを学ぶという「シリアス」がマジで丁度良く混ざった傑作。各キャラの個性の出し方も上手だったし、かなりの高水準に位置する話。タロウの「人の幸せを学ぶ」というドラマ軸が活かされた数少ない話でもある。


クラシカルなピアノも交えつつ、しっとりと締めるのも最高。中盤までのわちゃわちゃ感からは想像も出来ない優しい締めで、心が洗われる。

けれども毒親の支配からは逃れられないっていう恐ろしさも併せ持ってるし、文句なしのハッピーエンドではないのが難しい所。色々含みがあって面白いですわ。


・25話

他者への思いやりを持つ事の大切さを説いたドンブラのメッセージ性が詰まった話。すれ違いコントとしては強引な所が多々あるけれども、核となるメッセージは真面目なのでそこだけでおつりがくる。

形はどうであれ、ドンブラの5人が力を合わせてお店の再建に携わるってのも熱い。皆で力を合わせる展開なんか、本当にマジでないからね(戦闘は別として)。



・まとめ

この頃から明確にドラマに対する向き合い方が変わってきてるね。連続性のある展開はほぼなくなり、緩い単発回がグッと増えてきた。

とは言えドラマ要素がかろうじて生きてる話もまだまだ多い印象で、ギャグとシリアスのバランスが良い具合の時期やね。ギャグを主体とした作品の方向性が定まりつつ、初期の様な真面目さが残ってるこの塩梅。単発回の中でも地味に話を広げたりもしてるし、最も安定感のある時期と言えるかもしれない。


この辺で一番気になったのは、各話の接続の悪さ。連続性の無さとも言える。
話が一貫してないっていうか、その話のオチに関する話題を数話経ってから言及する事がやたらと多い。「その話題今更じゃね?」って思う事が死ぬほど多かった。

例えばジロウの処遇に対する話題。

16話「ジロウは危ない奴!」

17話「(翼メイン回なのでジロウの事はノータッチ)」

18話「ジロウは危ない奴だからハブろう!」

24話「ジロウは危ない奴だからハブろう!(リプライズ)」


みたいな。
ムラサメも同様で、18話での初登場後、彼に再度言及したのはしばらく経過した24話だったりする。しばらくしてから「そういえばあの時……」って感じで言及するのが基本なんよな。


今のドンブラでも「えっそれってあと数話早く言及するべき話題やろ……」って思う事が多いけど、この時期からそれは健在だった。リアタイ当時は「謎とか疑問点を適宜振り返ってくれるのは親切設計やね」なんて思ってたけど、一気見すると話題の一貫性・連続性の無さがマジで気になった。

情報を振り返って欲しい時に振り返ってくれないもどかしさが結構あって、割とイライラしたところだったりする。1クール目は前話の内容を受けて即座にアクションを起こす事が多かったんだけど(おにぎり屋再建のお礼をしに来るつよしとか)、もはやそんな連続性は感じられない。

ジェットマンの頃から変わってねえなあ!って感じ。


あとこの期間の話を見て思ったのが、「マジで話が進んでない」って事。友達もそこを気にしてたわ。

ムラサメとかソノザとかジロウとか、キャラの幅を広げたりする事はあれど、既存要素を活用する事はほっとんどない。風呂敷を広げてばかりで、回収したり脚色したりする事はマジでなかった。

ここら辺で翼とつよしの関係とか、タロウとソノイの関係とかを積み重ねられていたら良かったんだろうけど、そういう「仲良くなるためのイベント」的なモノは本当に何もない。なーんにも積み重ねが発生してない期間なんよね。


獣人問題もろくな説明もなく放置されてる状況で、23話でみほがちょっと戦闘したくらい。
話が進まない分人間関係を補強して欲しかったんだけど、そういう事にもならず。ジロウ分裂とかはるかの漫画道とか、ちょっとしたイベントは発生してるけれども、直接本筋に関与してる訳じゃないしなあ。

リアタイ当時は「単発回でも話進めて偉い」と思ってたけど、そこで進んだのって枝葉の部分で、話の核心には触れてないっていう。この辺は非常に勿体ない。新要素であるムラサメも特に機能してないしね。


露骨に話が停滞してるのを感じつつ、今はまだ勢いとか楽しいギャグのおかげで面白く見る事が出来てる。ここから真の中だるみ期間に入っていくわけだけど、印象はどの様に変化していくんでしょうか。