今回は越監督でした。これまでは2話程度の参加にとどまっていたけれど、このタイミングで登板するという事は、ローテーションに組み込まれたって事なんだろうか。しかも1クール目の締めというタイミングでの抜擢だし、中々思い切った人選だと思います。

そんな今回はウルトラマンらしさ150%のお話でした。悪い意味で手垢まみれで、既視感しかない王道中の王道展開でした。それが面白いかはさておき、新鮮さはなかったね。

雰囲気自体は結構好きだし、考えさせられる話ではある。答えを出すのが難しいけれど、ウルトラマンを描く上で避けては通れない道なんでしょう。

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・カイザキ副隊長

今回のカイザキさんは何かテンション高かった。研究者としての血が騒いだのか、後半のシリアスな雰囲気を強調する為に少しフランクに描いたかは分からないけど、新鮮でしたわ。違和感も多少あったけどね。

今回は彼女の掘り下げ回でした。GUTSセレクトに入った理由としては怪獣災害に遭った事がきっかけだしリュウモンと似ているけれど、その体験から感じ取ったのは怪獣への憎しみだけじゃなかったという。


暴れ出した怪獣にも事情があるし、人間の環境破壊や都市開発によって被害を受けている事も多分にある。怪獣だけが一方的に悪いとは言い切れない事情があるだけに、殺してはいおしまいという風に割り切るのは難しい。

初代の頃から怪獣には可哀想な事情があった。核廃棄物を食べちゃったとか、都市開発で居場所を奪われたとかね。「怪獣にも可哀想な事情があるよ」というのはウルトラマンには避けて通れないテーマだし、今回はデッカーなりに向き合った形になるんだろうね。


とは言えどの作品も毎回毎回おんなじ事を議論してるから、本当に食傷気味な所はある。巨大な力を持つのはダメだーって話もそうだけど、手垢まみれで手癖だけで作ってんじゃないかなって気がするわ。保守的というか、守りに入ってるよね。

怪獣を保護するのとか、使い古されたテーマだし。何年経っても同じ展開を作ってしまうのは、先人たちの作品に満足してないからって事になりそうだよね。そこに向き合ったコスモスがシンプルにゴミなもんで、そこを超えたいと思うのは当然か。


・シゲナガさん

怪獣の存在意義とか権利を守ろうってのが今回のお話だったけど、どこまで権利を認めるのかは難しい所。怪獣は存在してるだけで迷惑をかけるし、平和に共存するのは難しいと思うしね。それに善良な怪獣とか人間のエゴのせいで暴れ出した子もいるけれど、シンプルに害悪な怪獣だっている事を無視してはいけない。

シゲナガさんは怪獣の研究をしていたけれど、怪獣の恐ろしさを実感するうちに、クローン技術を駆使して支配して使役する道を選んでました。ノワール星人的な感じだよね。


この問題の難しい所は、別に彼女は間違ってないという所よね。怪獣を支配するのは確かに可哀想ではあるけど、変に野放しにして暴れさせて殺処分にするよりかはマシかもしれないし。人間の管理下に置くというのは、一概に責められるモノではない。

それに彼女だって、怪獣退治に貢献してるしね。自衛のための手段の一つとして怪獣を操っているだけで、特別悪意もないでしょ。平和を願う気持ちはGUTSセレクトと同じだし、根底には善意があるんだよな。方法が過激というだけで。人類の進歩の為に頑張ってるんだし、凄く立派だと思いました。


個人的にはシゲナガさんの行動に共感したというか、普通にアリだと思ったから、彼女を頭ごなしに否定する副隊長に着いていけなかった。シゲナガさんの技術が悪用される可能性があるとか言うけど、シゲナガさんにはそういう意図はないだろうし。

悪用するかどうかはあくまでもクライアント次第であって、彼女はそんなに悪くない。それを言い出したら、GUTSセレクトの戦力だって使う人が使えば悪用出来るし……

綺麗事だけで突き進めない現実があるからこそ、彼女なりに妥協点を見つけて努力してるのは偉いと思ったけどなあ。


それに「ネオガメスは破壊を生むだけの力!怪獣より質が悪い!」とか言ってたけど、ここも説得力がないよね。だって実際に破壊工作を行ってないんだもん。バッチリと管理が出来て、制御も出来てるんだから、「破壊を生むだけ」とか言い出すのはただの偏見にしかなってない。根拠がない。

これがもしコントロールが不安定とか、意図せず暴走するとか、そういう実績があれば分かるんだけどね。シゲナガさんの技術に穴がない状態で否定に走るのは違うと思いました。


挙句には勝手にコントローラーを破壊して事態を大事にするし、副隊長の行動が相当ポンコツ過ぎた。どっちが悪役か分かんなくなるんだよな。シゲナガさんの正論に対して、感情論でしか物申してない副隊長が相当幼稚に見えたわ。これは春野ムサシ。


・結論

副隊長は「出来るだけ無益な争いを避け、命を守れる道を探したい」と決意してました。ここの決意表明は彼女の過去と合致してるし、彼女なりに辿り着いた結論と言う感じでとても良かった。

キャラの掘り下げとしてはかなり良いんだけど、今回の話のオチとしてはややパッとしない感じはある。

人間と怪獣が共存する道を探すとか、将来に期待するのとか、怪獣保護とか大それた事は考えてないとか。割と現実的な答えを出してるというか、そこまで飛躍はしてないんだよな。大きすぎる理想を謳うのではなく、ある程度現実的な解答だったと思う。

何でもかんでも答えが出せる問題じゃないからこそ、そういう現実的でリアルな答えを出したのは素晴らしいんだけど、シゲナガさんのカウンターとして考えるとやっぱりどうしてもパワー不足過ぎる。

彼女は人間と怪獣が共存する道はありえないとか滅ぼすか制御しないといけないとか極めて具体的な事を言ってるんだけど、副隊長の反論はどうしても抽象的過ぎる。フワフワしてて負け惜しみにしかなってないし、具体的に何がどう展開するのかも分からない。


シゲナガさんが逮捕されて終わったけれども、「試合に勝って勝負に負けた」って感じなんよね。何が言いたいかよく分からなかったし、どうしても見劣りする。


今後怪獣との共存問題がどこまで発展するかは分からない。継続的に向き合うのか、それとも今回限りのテーマになるのか(今回の脚本はシリーズ構成の人だし、重要回である事は確かなんだけど)。作品通して向き合う問題にしては着手するのが遅過ぎた感があるし、どこまでハンドリングが出来るかは不安だね。


総じて、問題提起とかテーマの面白さは既視感しかなくて面白味はない。結論もフワフワしてて微妙。でも副隊長の掘り下げとしては中々に良かった……って感じのお話でしたとさ。


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